福居ショウジンの秘蔵小説

二九一号室ノ住人

プロローグ

1 / 2

身元不明の少女 Ⅰ

1 / 2 / 3 / 4 / 5

身元不明の少女 Ⅱ

1 / 2 / 3 / 4

身元不明の少女 Ⅲ

1 / 2 / 3

弥生

1 / 2 / 3 / 4 / 5

291号室

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

第二の事件

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7

リプレイ

1 / 2 / 3

見殺し

1 / 2 / 3 / 4 / 5

再捜査

1 / 2 / 3 / 4 / 5

生霊

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7

協力者

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9 / 10
11 / 12 / 13 / 14 / 15

潜伏

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

果て無き興亡

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

再捜査 Ⅱ

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6 / 7 / 8 / 9 / 10

エピローグ

1

果て無き興亡 Vol.4

清美は雑誌の掲載記事をもう一度、確認した。

「佐和子って、源三の奥さん?」

「そうです」

「待って!舞は、舞はどうなるの?」

「それも含めてお話します。今から言う事を最後まで聞いて下さい。非常に重要なことです」

取り敢えず、清美は混乱した状態からは脱していた。相変わらず冷静ではいられなかったが、清の話を聞く余地だけは残っていた。

「昭和35年から始まったプロジェクトは翌年、卓也が一人だけ誕生したんですが、後は無惨なものでした。プロジェクトに関わった研究者達はRに改良を加えましたが、その後全く成果を得られない状態が続いたんです。時代が時代なだけに、プレッシャ-もあったでしょうし、たった一人の成功例など、何の成果にもならなかった。つまり、たまたま産まれたと認識していたのでしょう。実は、最も重要な事を見逃していたとも気付かずに。卓也が産まれて四年後、ある事故が起きました。その事故によって研究者達はRに副作用があった事実を初めて知る事になるんです。昭和40年9月10日、徳島県を通過した台風23号は兵庫県明石市を直撃しました。明石市上ノ丸に住んでいた山岸夫婦と卓也の家は大変な被害を受け、住居の二階部分が全て吹っ飛ばされたそうです。当然、家屋は倒壊し、下敷きになった一家は無惨な死を遂げました。誰もが台風の被害によるものだと。ところが、卓也だけ瓦礫の下から生きたまま救出されたんです。警察による現場検証では全員、事故死と断定されたんですが、その後、我々公安部が改めて徴集される事になったそうです。結論から言います。家屋の倒壊は台風によるものではなく、卓也が引き起こしたものだったんです。当時は全く説明が付かなかったそうですが」

暫く清は、清美の反応を見るような目付きをして黙っていた。清美は何となく想像が出来た。

「サイキックが引き起こされたのね。それも半端なものじゃない。爆発的なもの」

「その通りです。卓也は徹底的に調べられました。そして脳の一部に障害がある事が判明したんです。Rの副作用によって脳の一部が奇形化していたということなんですが。サイキックとの関連性は明らかにされていません。最も40年前の話しです。当時そんな研究機関は存在しませんでしたから。もっと言えば、研究自体が存在しなかった。真実は一つなのです。家屋は外部からの圧力によって倒壊したのではなく、内部からの圧力によるものだった。台風の為、初動捜査を誤ったんでしょう。プロジェクトサイドにとっては好都合でした。政府は慌ててプロジェクトを凍結したのです。成果の上がらない研究に何時までも予算は組まれません。ところが、いくら予算が停止されたからといっても、研究者達は卓也を隔離して調べるどころか、そのまま放置してしまったんです。ずさんもいいとこです。事の重大さに気付いていなかったとでも言えばいいんでしょうか。無論、卓也は何も覚えていません。四歳児です。当然といえば当然ですが。その後、卓也は里親の元に引き取られました。里親といっても民間人ではありません。我々の関係者です。当時の公安部で卓也を監視する決断が下されたそうです。予算が正規に受理された訳ではありませんから、卓也の能力を研究するといったものではなく、あくまで監視目的で。卓也は氏名を変更されました。事件と無関係にする為です。その子が今井源三なんです」

Vol.5へつづく

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