(2010/DVCAM/モノクロ/ステレオ/16:9/30min)
配給 ホネ工房/シネマアートン下北沢
配給協力 シーグリーン
元彼、伸一(友利栄太郎)にストーカー行為を受け会社を辞め、逃げるように引っ越して来たばかりの鳴海(溝手真喜子)は、心身喪失症に陥りアルコール依存の日々を送っていた。
ある日突然、謎の女・愛子(秋津ねを)が鳴海の部屋に乱入し、彼女を拘束、潜伏を開始する。鳴海は愛子から凄まじい暴力を受ける。さらに、特異な「能力」を持った愛子は、自由を奪った鳴海の脳内情報をことごとく読み取っていく。そして愛子が鳴海から伸一に関する情報を引き出したとき、二人の前に伸一が現れる。
絶体絶命の鳴海だったが、愛子の能力が展開する中、次第に鳴海にも特異な能力が覚醒していく。
これは現実なのか?
それとも狂っているのか?
覚醒の末に鳴海が見た真実とは!
■ キャスト
有田鳴海役:溝手真喜子
坂元愛子役:秋津ねを
米沢伸一役:友利栄太郎
■ スタッフ
製作・配給・宣伝:ホネ工房
プロデューサー:遠藤彰夫
監督・脚本・編集:福居ショウジン
制作・照明・美術:友利栄太郎
撮影・照明・録音:蔭山周
特殊造形:椋梨夜
助監督:加島優一
制作・宣伝:東澤俊秀
デスク:藤川久美子
1980年代末から90年代初頭。
石井聰亙・黒沢清・山本政志らインディペンデント・シーンをムーブメントにまで高めた先人たちの流れを受け継ぎ、園子温・塚本晋也など次々と刺激的な映画を作る若手監督が現れた。
その個性がひしめく時代に、圧倒的に異彩を放ち続けた存在、福居ショウジン。
映像制作集団・ホネ工房を率い、1万人を超える驚異的な観客動員を果たした『ピノキオ√964』や『ラバーズ・ラバー』など、海外でも上映・販売されるほどの熱狂的なファンを獲得する問題作を発表した。
時は流れ、2007年。
福居はインディペンデント系若手監督のユニット・over8のトークゲストとして出演し、"映画の新しい可能性を追求する"というover8のテーマに刺激を受け、自らの原点であるインディペンデントに立ち返った映画制作を決意する。そのため福居は、10年ぶりにホネ工房を再結成。すぐに動き出した企画は、伝説と、そして新たな熱を巻き込み、完成した。
それが『the hiding -潜伏-』である。
別れた恋人のストーカー行為に怯えるヒロインが、自宅に侵入してきた謎の女の血液を媒介として、 秘められた能力を覚醒させていく。
予測不能のストーリーが進行する本作は、世界に類を見ないサイキック・シチュエーション・スリラーである。
また、90年代当時に福居の伝説を間近に体験していた、over8メンバーの蔭山周が撮影を担当したことにより、さらに凄みを増した福居の世界観を存分に体験できる作品である。
『潜伏』はお客さんあなたがたの体と反応することではじまる中篇40分の映画。中毒とはこういう状態を指す。
僕がアンダーグラウンドの実験映画好きな子供の頃、何度も怖くて。福居ショウジンという作者の名前が。飲んだことのまだないアルコール分の強烈なカクテルのような気がしたんだ。
久しぶりの新作に触れた去年の暮れ、アルコールで前後不覚になり神経麻痺起こす体を思いだした。
触れたら危ない、注意が要る。
上手に中毒を乗りこなせるお客さんを選ぶ映画。僕には極上の一編なんだ。
/柴田剛(映画監督『おそいひと』)http://osoihito.jp/top/
福居ショウジンが長い潜伏を経て目覚めた次章は、官能的に幕を開けた。
/釣崎清隆(写真家・映画監督『死化粧師オロスコ』)
福居ショウジンが還ってきた。
爆音と疾走感に身をゆだねる快感、内的宇宙へのトリップ感覚。
マジカル・ミステリー・ツアーの始まりだ。
/西村隆(映画プロデューサー 『三月のライオン』)
生きたいとか死にたいとか好きだとか嫌いだとか、そんなナマヌルさをぶっ飛ばす『伝説』の復活に歓喜しろ!!
/佐々木誠(映画監督 『Fragment』)http://www.fragment-movie.com/
潜伏のセンは、譫妄のセン。そこは絶え間なく続く無間地獄の如き因果の水底。
/加賀賢三(映画監督)http://blog.livedoor.jp/onosendai/
どインディーズの様な始まり方だが、求心力のある演出にすぐに引き込まれる。
主人公女性と同じ[感覚]を持った人達が、僕の周りにはかなり居る筈。
/ゴッホ今泉(イラストレーター/「デパートメントH」主宰)http://www.dept-h.com/
まず音が不快、映像が不快、ストーリーが不快。
こんなに不快な映画なのに、不思議と目が離せない。食い入るように見入ってしまう。
鑑賞後、あまりの「圧倒的な何か」にやられてへとへとになってしまった。
言葉では説明できない「圧倒的な何か」、それは強烈な刺激なのか。
この映画を一緒に観た、うちの自慢の美人妻が、翌日寝込んでしまった。きっと知恵熱だろう。
それほど危険な刺激物だった。
/二見明(ライター)
福居ショウジンが『ピノキオ√964』と『ラバーズ・ラバー』で、あなたの脳みその限界を超えた領域を走る、狂ったローラー・コースターのサイコ・ライドへあなたをどう連れて行ったか覚えているか?自分の身に巻きつけようとした精神的なシートベルトのことを覚えているか?
それらは全く役に立たなかった。あの乗り物は乱暴で深遠すぎた。あなたを、あなたが知らなかった領域へ連れて行く…
その道中ずっと狂気の境目を跳ね回り続けるその事実であなたにショックを与える。その境目を越えることはとても簡単で、一度超えたら二度と同じ自分ではいられない。
福居の新作『the hiding-潜伏-』に出てくる女の子は、既にその境目を越えている。彼女はどんな些細なことにも怯えて、見るもの全てに恐ろしい暴力的なヴィジョンを視る引きこもりだ。
みんな聞いて欲しい。
もし、あなたが自分の精神的な許容量について実験したいと思うなら、
エクストラ・ストロングなLSDを売ってる街角があったら、
そこでダブル・ドーズを手に入れて、安全な場所で飲んだらいい。
ストレートに残りの人生精神病院行きだろうけど、それでも、福居の映画を観るよりは、はるかに安全だ。
あいつらは強すぎる。信じてくれ。俺は観てきたんだから。
/ヨハネス・シューンヘル(『トラッシュフィルム・ロードショーズ』著者)
07年初春、若手監督たちの共同企画『over8』のゲストとして、敬愛する福居ショウジン監督をお招きした。
ショウジンさんは僕らの映画をすごく面白がってくれて、「俺もなんかやる!」と宣言した。
それから数ヶ月後、僕はとんでもないものを観た。
なんだこの感じ。いつまでも身体の芯に残る、なぜか心地よい、違和感。
たぶん僕は、この映画に、襲われたのだと思う。ムチャクチャにされて、愛されたんだと思う。
僕らの出したパスから、ものすごいシュートが生まれたのだ。
永らく『潜伏』していた福居ショウジンが、劇場に還ってくる。観客を襲撃するために。
/福島拓哉(映画監督)http://www.p-kraft.com/